2015年10月4日日曜日

投資観 第8回 1990年の米国の景気後退と逆イールドの関係

前回は、2000年の日本の景気後退と米国債イールドカーブの関係について、述べました。

今回は、さらに、年代を遡って、1990年の米国の景気後退とイールドカーブならびに米国の株価の関係について、述べます。なお、この時期には、米国でS&L危機(多数の貯蓄貸付組合が破綻)が米国で発生しています。

以下のグラフは、1982年5月12日からの米国債イールドカーブの推移です。(既出)


また、以下のグラフは、米国の代表的な株価指数であるS&P500指数の、1988年1月から1991年12月までの月次終値の推移です。

この期間中の最初の米国債イールドカーブ(90日移動平均)の逆転は、1989年6月12日に出現し、その月のS&P500指数(月次終値)は、318.0でした。

上のグラフから、1990年の米国の景気後退においても、約5四半期(14ヶ月)前に、イールドカーブの逆転が検知され、先行指標として有効に機能していたことが分かります。

また、この時の景気後退は、これまでの二度の景気後退(ドットコムバブル、住宅バブル)とは異なり、バブルを伴わない、比較的に穏やかなものだったこともあり、株価の大幅な下落は見られませんでした。

ここで、逆イールドを検知した月に、S&P500指数を売却した場合のパフォーマンスを機会損失と損失回避の差として、算出すると以下のようになります。

機会損失・・・景気後退入り前の最高値である1990年5月の361.2ポイントまで、保有しなかったことによる利益機会の損失。

  (361.2 - 318.0) ÷ 318.0 × 100% = 13.5

損失回避・・・景気後退期間中の最低値である1990年10月の304ポイントまで保有しなかったことによる損失の回避。

  (304.0 - 318.0) ÷ 318.0 × 100% × (-1) = 4.4

投資パフォーマンス = 損失回避 - 機会損失 = 9.1

景気回復が穏やかで、株価の下落幅が小さかったため、逆イールドを契機にした株式投資のパフォーマンスも、比較的に小幅なプラスとなっています。

以上のように、1990年の米国の景気後退においては、イールドカーブは、景気後退の先行指標としては良好でしたが、株式投資(売却)の指標としては、これまでの二度の景気後退ほど、良くはありませんでした。

次回は、この、1990年の米国の景気後退における、住宅統計など他の先行指標の動きについて、調べてみます。

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