今回は、さらに、年代を遡って、1990年の米国の景気後退とイールドカーブならびに米国の株価の関係について、述べます。なお、この時期には、米国で、S&L危機(多数の貯蓄貸付組合が破綻)が米国で発生しています。
以下のグラフは、1982年5月12日からの米国債イールドカーブの推移です。(既出)
また、以下のグラフは、米国の代表的な株価指数であるS&P500指数の、1988年1月から1991年12月までの月次終値の推移です。
上のグラフから、1990年の米国の景気後退においても、約5四半期(14ヶ月)前に、イールドカーブの逆転が検知され、先行指標として有効に機能していたことが分かります。
また、この時の景気後退は、これまでの二度の景気後退(ドットコムバブル、住宅バブル)とは異なり、バブルを伴わない、比較的に穏やかなものだったこともあり、株価の大幅な下落は見られませんでした。
ここで、逆イールドを検知した月に、S&P500指数を売却した場合のパフォーマンスを機会損失と損失回避の差として、算出すると以下のようになります。
機会損失・・・景気後退入り前の最高値である1990年5月の361.2ポイントまで、保有しなかったことによる利益機会の損失。
(361.2 - 318.0) ÷ 318.0 × 100% = 13.5
損失回避・・・景気後退期間中の最低値である1990年10月の304ポイントまで保有しなかったことによる損失の回避。
(304.0 - 318.0) ÷ 318.0 × 100% × (-1) = 4.4
投資パフォーマンス = 損失回避 - 機会損失 = 9.1
景気回復が穏やかで、株価の下落幅が小さかったため、逆イールドを契機にした株式投資のパフォーマンスも、比較的に小幅なプラスとなっています。
以上のように、1990年の米国の景気後退においては、イールドカーブは、景気後退の先行指標としては良好でしたが、株式投資(売却)の指標としては、これまでの二度の景気後退ほど、良くはありませんでした。
次回は、この、1990年の米国の景気後退における、住宅統計など他の先行指標の動きについて、調べてみます。
0 件のコメント:
コメントを投稿