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2017年1月15日日曜日

投資観 第47回 米国債イールドカーブの有効性のまとめ

前回は、1951年から1961年までに、米国債の逆イールドが発生しなかった理由を探ってみました。

今回は、このシリーズの最終回として、米国の景気後退の先行指標としての米国債イールドカーブの有効性について、まとめます。

これまでに述べてきたように、米国債イールドカーブは、1970年代以降、7度の景気後退を全て正確に予測してきました。現時点では、米国の景気後退の先行指標として、最も高い精度の指標の一つであると言えます。

しかし、その一方で、1930年代から1960年代に発生した、6度の景気後退の一度も、予測を出来ませんでした。また、1966年には、景気後退入りを予測しましたが、その後、景気後退に陥ることはありませんでした。このように、1930年代から1960年代にかけて、米国債イールドカーブは、景気後退の先行指標として、全く機能していませんでした。

この時期に、先行指標として機能しなかった理由をまとめると、以下のようになります。

1.金利を人為的に固定化する政策
大恐慌後ならびに第二次世界大戦中の米国債価格の維持政策の実施により、金利が固定化された結果、1934年から1950年の間、逆イールドが出現しなかった。

2.強引な金融引き締め政策
第二次世界大戦後の高インフレを克服するために、強引ともいえる、金融引き締め政策が実施されたため、1951年から1961年の間、逆イールドが出現しなかった。

3.突発的で大規模な財政支出
1966年に逆イールドが出現し、景気後退を予測したが、その後、ベトナム戦争の拡大により、軍事費の支出が急増し、景気後退が回避されてしまった。

上のように、恐慌や戦争などの非常事態の発生によって、米国の金融・財政政策が極端な方向に振れると、米国債イールドカーブの景気後退の先行指標としての有効性が低下すると考えられます。

従って、今後、米国債イールドカーブを景気後退の先行指標として利用する場合は、その時点での、米国の金融・財政政策の動向を注視した上で、有効性を評価することが必要であると言えます。

2016年12月25日日曜日

投資観 第45回 1937年~1950年に逆イールドが発生しなかった理由

前回は、1937年6月から始まる米国の景気後退について、米国債イールドカーブとの関係を調べました。

今回からは、1934年から1961年までの、長期と短期の米国債利回りの推移を分析して、米国債の逆イールドが発生しなかった理由を探ってみたいと思います。

以下のグラフは、1934年5月から1961年8月までの、米国債3ヶ月既発債と米国債10年新発債の利回りの推移です。



このグラフを見ると、1950年前後を境に、利回りの動き方が大きく変わっていることが分かります。

1950年以前は、利回りの変動が非常に少なく、ほぼ、横に一直線です。
これは、1929年の大恐慌後の不況と1939年から始まる第二次世界大戦を通じて、FRBが米政府から直接、米国債を買い入れて金利の変動を抑える、国債価格維持政策が行われていたためです。FRBは、長期金利を、2.5%に維持することが政策目標だったと言われています。

短期金利も、大恐慌後のデフレに対応し、景気を刺激する目的で、ほぼ、0%に抑えられていました。

しかし、景気が次第に回復し、さらに、軍事費の支出が増えてくると、短期金利を、ゼロに抑えたことによる弊害が出始めます。

以下のグラフは、最初のグラフと同じ期間における、米国のCPIの前年同月比の推移です。


1939年から始まった第二次世界大戦の影響で、1942年頃からインフレが加速して、物価上昇率が10%を超えるようになり、終戦直後の1947年には、20%近くに達しました。

この結果、第二次世界大戦後のインフレに対応するために、1951年に米財務省とFRBは、「アコード」を締結して、国債価格の維持政策を撤廃しました。

「アコード」の締結後、FRBは、物価の安定を政策目標として、短期金融市場の目標レートの操作を通じた金融政策に専念し、一方、米財務省は、米国債市場に向き合って、財政政策を行うようになり、長短の金利が市場で形成されるようになりました。1950年以降に、利回りの変動が大きくなったのはこのためです。

このように、1937年から1950年に、逆イールドが発生しなかった理由は、FRBが国債価格維持政策を実施するために、長短金利を固定したことが理由だと考えられます。

次回は、1950年から1961年に、逆イールドが発生しなかった理由を探ってみたいと思います。

2016年11月27日日曜日

投資観 第43回 1948年の米国の景気後退とイールドカーブ

前回は、1948年12月から始まる米国の景気後退について、米国債イールドカーブとの関係を調べました。

今回は、さらに、時代を遡って、1945年3月から始まる米国の景気後退について、米国債イールドカーブとの関係を調べてみます。

この時、景気後退入りの3年前の1942年2月から景気後退入り直前の1945年2月までの3ヶ月既発債の平均利回りは、0.4%でした。

米国債3ヶ月既発債と同新発債の過去の利回り差の分布を調べると、既発債が0.4%の場合、新発債との利回り差は、殆どゼロでした。

従って、上記の期間の米国債3ヶ月既発債の利回りを、そのまま適用して、イールドカーブを作成したのが、下のグラフとなります。


上のグラフを見て分かるように、1945年3月から始まる米国の景気後退に対して、イールドカーブの逆転は、発生していません。

従って、この時期においても、前回と同様に、米国債イールドカーブは、景気後退の先行指標として機能していなかったと言えます。

また、前回と同様に、イールドカーブが、ほぼ、横に一直線となっていることが特徴的です。

これは、長期金利と短期金利が、政策的に固定されていた結果、イールドカーブが景気の変動を反映していなかったためと考えられます。

このように、金利が人為的に固定され、市場で決まらない状況にある場合、イールドカーブが景気後退の先行指標となることはありません。

次回は、さらに、時代を遡って、1937年6月から始まる米国の景気後退について、同様の分析を行ってみたいと思います。

2016年11月20日日曜日

投資観 第42回 1948年の米国の景気後退とイールドカーブ

前回は、1953年8月から始まる米国の景気後退について、米国債イールドカーブとの関係を調べました。

今回は、さらに、時代を遡って、1948年12月から始まる米国の景気後退について、米国債イールドカーブとの関係を調べてみます。

この時、景気後退入りの3年前の1945年11月から景気後退入り直前の1948年11月までの3ヶ月既発債の平均利回りは、0.6%でした。

米国債3ヶ月既発債と同新発債の過去の利回り差の分布を調べると、既発債が0.6%の場合、新発債との利回り差は、殆どゼロでした。

従って、上記の期間の米国債3ヶ月既発債の利回りを、そのまま適用して、イールドカーブを作成したのが、下のグラフとなります。


上のグラフを見て分かるように、1948年12月から始まる米国の景気後退に対して、イールドカーブの逆転は、発生していません。

従って、この時期においても、前回と同様に、米国債イールドカーブは、景気後退の先行指標として機能していなかったと言えます。

さらに、上のグラフで特徴的なのは、1945年11月から1945年7月にかけて、ほぼ、横に一直線となっていることです。
この期間は、長期金利と短期金利が、政策的に固定されていたのかもしれません。
金利が市場で決まらない状況にある場合、イールドカーブが景気後退の先行指標となることはありません。

次回は、さらに、時代を遡って、1945年3月から始まる米国の景気後退について、同様の分析を行ってみたいと思います。

2016年11月13日日曜日

投資観 第41回 1953年の米国の景気後退とイールドカーブ

前回は、1957年9月から始まる米国の景気後退について、米国債イールドカーブとの関係を調べました。

今回は、さらに、時代を遡って、1953年8月から始まる米国の景気後退について、米国債イールドカーブとの関係を調べてみます。

この時、景気後退入りの3年前の1951年8月から景気後退入り直前の1953年7月までの3ヶ月既発債の平均利回りは、1.8%でした。

米国債3ヶ月既発債と同新発債の過去の利回り差の分布を調べると、既発債が1.8%の場合、新発債は、それよりも、0.04%低く出ます。

従って、上記の期間の米国債3ヶ月既発債の利回りを、0.04%下方に調整して、イールドカーブを作成したのが、下のグラフとなります。



上のグラフを見て分かるように、1953年8月から始まる米国の景気後退に対して、イールドカーブの逆転は、発生していません。

従って、この時期においても、前回と同様に、米国債イールドカーブは、景気後退の先行指標として機能していなかったと言えます。

次回は、さらに、時代を遡って、1948年12月から始まる米国の景気後退について、同様の分析を行ってみたいと思います。

2016年11月6日日曜日

投資観 第40回 1957年の米国の景気後退とイールドカーブ

前回は、1960年5月から始まる米国の景気後退について、米国債イールドカーブとの関係を調べました。

今回は、さらに、時代を遡って、1957年9月から始まる米国の景気後退について、米国債イールドカーブとの関係を調べてみます。

この時、景気後退入りの3年前の1954年8月から景気後退入り直前の1957年8月までの3ヶ月既発債の平均利回りは、2.2%でした。

米国債3ヶ月既発債と同新発債の過去の利回り差の分布を調べると、既発債が2.2%の場合、新発債は、0.05%低く出ます。

従って、上記の期間の米国債3ヶ月既発債の利回りを、0.05%下方に調整して、イールドカーブを作成したのが、下のグラフとなります。



上のグラフを見て分かるように、1957年9月から始まる米国の景気後退に対して、イールドカーブの逆転は、発生していません。

従って、この時期においても、前回と同様に、米国債イールドカーブは、景気後退の先行指標として機能していなかったと言えます。

次回は、さらに、時代を遡って、1953年8月から始まる米国の景気後退について、同様の分析を行ってみたいと思います。

2016年10月16日日曜日

投資観 第39回 1960年の米国の景気後退とイールドカーブ

前回は、公開情報に基づいて、1930年代から2010年代までの米国債イールドカーブ(調整前イールドカーブ)を作りました。

今回から、1960年から時代を遡って、利回り調整を行いながら、各景気後退におけるイールドカーブの推移を調べて行きます。

まず、1960年5月から始まる米国の景気後退について、米国債3ヶ月既発債の平均利回りを、求めました。
景気後退入りの3年前の1957年4月から景気後退終了から半年後の1961年8月までの平均利回りは、2.9%でした。

米国債3ヶ月既発債と同新発債の過去の利回り差の分布を調べると、既発債が2.9%の場合、新発債は、0.07%低く出ます。

従って、上記の期間の米国債3ヶ月既発債の利回りを、0.07%下方に調整して、イールドカーブを作成したのが、下のグラフとなります。


上のグラフを見て分かるように、1960年5月から始まる米国の景気後退に対して、イールドカーブの逆転は、発生していません。

従って、この時期において、米国債イールドカーブは、景気後退の先行指標として機能していなかったと言えます。

次回は、さらに、時代を遡って、1957年9月から始まる米国の景気後退について、同様の分析を行ってみたいと思います。

2016年10月9日日曜日

投資観 第38回 1932年~2016年の米国債イールドカーブ(調整前)

前回は、1950年代以前の米国債利回りの公開情報について調べました。

今回は、前回に調べた公開情報に基づいて、1930年代から2010年代までの米国債イールドカーブを作ってみます。

まず、1934年1月から2016年8月までの、米国債の10年新発債と3ヶ月既発債の月次利回りを、そのまま、重ね合わせて、グラフ上にプロットしたものが、以下の図です。


上のグラフの左側を見ると、1934年から1961年に発生した6回の景気後退の中で、逆イールドが発生した可能性があるのは、1957年と1960年の2回の景気後退のみであることが分かります。

以下のグラフは、上のデータから作成した、1934年3月~2016年8月の米国債イールドカーブです。


上のグラフで、月次の利回りは、3ヶ月移動平均を取っています。また、新発債(10年債)と、既発債(3ヶ月債)との間で、ベースを合わせるための利回り調整を行っていません。

上のグラフの左側を見ると、調整前イールドカーブでは、1934年から1961年に発生した6回の景気後退の前には、いずれも、逆イールドが発生しなかったことが分かります。

次回からは、1960年から時代を遡って、利回り調整を行いながら、各景気後退におけるイールドカーブの推移を調べて行きたいと思います。

2016年10月2日日曜日

投資観 第37回 1950年代以前の米国債利回りの公開情報

前回は、1920年代末から1950年代の米国債イールドカーブが、景気後退の先行指標として機能していなかった可能性があることを述べました。

今回は、上記の事実を確認するために、1950年代以前の米国債利回りの公開情報について調べます。

まず、米国債の10年債利回りについて、現在、公開されている最も過去の日次データは、1962年1月2日となっているため、これ以前の日次データのイールドカーブは作成することが出来ません。

従って、今後は、精度を落とした月次のイールドカーブを作成して分析することにします。

月次の米国債10年債利回りについては、1871年1月まで遡ることが可能です。

10 Year Treasury Rate by Month

以下のグラフは、1871年1月からの米国債・新発債10年債利回りの推移です。


また、米国債3ヶ月既発債利回りの月次データについては、1934年1月まで遡ることが可能です。


以下のグラフは、1934年1月からの米国債・既発債3ヶ月債利回りの推移です。


次回は、これらのデータを使って、1934年からのイールドカーブを作成してみることにします。


2016年9月25日日曜日

投資観 第36回 1927年~2007年の米国債利回り (参考)

前回は、1960年代以降の三種類の米国債イールドカーブの特徴を比較しました。

今回からは、さらに、時代を遡って、1920年代後半から1950年代のイールドカーブの推移を探ってみます。

まず、以下のグラフは、1927年から2007年までの米国債利回りと米国株式配当利回りの推移です。
青色・・・株式(S&P500)の配当利回りの12ヶ月移動平均
橙色・・・米国債3ヶ月債の利回り
緑色・・・米国債長期債(20年~30年債)の利回り


これは、QVMという投資アドバイス会社のRichard Shawという人が、調べたデータです。
注意)データの出典が確認出来ていないので、参考情報として捉えてください。
Safe Haven

このグラフの左側の緑色と橙色の線に着目すると、1928年~1930年辺りに、イールドカーブの逆転が見られますが、1958年辺りまでの約30年間は、イールドカーブの逆転が見られません。

ところが、1928年~1958年の間に、米国は、1929年からの恐慌を含めて、6回の景気後退に陥っています。

従って、この期間は、イールドカーブが米国の景気後退の先行指標として機能していなかったことになります。

次回からは、この事実の正否を、公開データを使って、確認していくことにします。

2016年9月11日日曜日

投資観 第35回 イールドカーブの比較

これまで、1962年から現在までの、約55年間の米国の景気後退と米国債イールドカーブの関係を、調べてきました。

今回は、これまで調べてきた三種類のイールドカーブの特徴を比較してみたいと思います。


1.新発債と新発債間のイールドカーブ

新発債の10年債と3ヶ月債のイールドカーブ(90日移動平均)は、以下のようにまとめられます。

【範囲】
このイールドカーブがカバーする範囲は、1982年から現在までの約35年間です。
この間に、3回の米国の景気後退が発生しました。

【逆イールド】
この間に、3回の逆イールドが発生して、いずれも、その6四半期以内に、景気後退が発生しています。
逆イールドの景気後退に対するリードタイムは、7ヶ月~16ヶ月です。


2.新発債と既発債のイールドカーブ(利回り調整前)

新発債10年債と既発債3ヶ月債のイールドカーブ(90日移動平均、利回り調整前)は、以下のようにまとめられます。

【範囲】
このイールドカーブがカバーする範囲は、1962年から現在までの約55年間です。
この間に、7回の米国の景気後退が発生しています。

【逆イールド】
7回の逆イールドが発生して、そのうち、6回で、6四半期以内に、景気後退が発生しています。
逆イールドの景気後退に対するリードタイムは、4ヶ月~15ヶ月です。

1966年に発生した逆イールドでは、その後に、米国は景気後退に陥りませんでした。これは、ベトナム戦争による軍事支出の拡大により、米国の景気後退が直前で回避された為と考えられます。

また、1990年の米国の景気後退では、その、直前に逆イールドが発生しませんでした。
これは、ベースを合わせるための、既発債の利回りの調整を行っていないことが原因と考えられます。


3.新発債と既発債のイールドカーブ(利回り調整後)

新発債10年債と既発債3ヶ月債のイールドカーブ(90日移動平均、利回り調整後)は、以下のようにまとめられます。

【範囲】
このイールドカーブがカバーする範囲は、1962年から現在までの約55年間です。
この間に、7回の米国の景気後退が発生しています。

【逆イールド】
8回の逆イールドが発生して、そのうち、7回で、その後、景気後退が発生しています。

1966年に発生した逆イールドでは、その後に、米国は景気後退に陥りませんでした。これは、ベトナム戦争による軍事支出の拡大により、米国の景気後退が直前で回避された為と考えられます。


4.景気後退の予測精度の比較

米国の景気後退を予測する精度を比較すると、以下の順になります。

新発債-新発債 > 新発債-既発債(調整後) > 新発債-既発債(調整前)

新発債・新発債間のイールドカーブは、ベースが一致していることから、現時点で、精度が最も高いと言えます。


5.長期的な信頼性

時間軸を考慮したイールドカーブの長期的な信頼性を比較すると、以下の順になります。

新発債-既発債(調整前)、新発債-既発債(調整後) > 新発債-新発債

新発債・既発債のイールドカーブがカバーする範囲は、約55年間と長期間に渡り、その間に、比較的に高い精度で、6回~7回の米国の景気後退の予測に成功しています。

一方、新発債・新発債間のイールドカーブは、カバーする範囲が、約35年間と相対的に短く、対象となる景気後退も三回のみであるため、サンプル数の不足から、未だ、長期的な信頼性に課題があると考えています。


6.予測の客観性

米国の景気後退を予測する際の客観性の高さについて比較すると、以下の順になります。

新発債-新発債、新発債-既発債(調整前) > 新発債-既発債(調整後)

新発債と新発債の間、ならびに、新発債と既発債(調整前)の間のイールドカーブは、単純な計算式で求められ、客観性が高いと言えます。

一方、新発債と既発債(調整後)に関しては、調整利回りを最終的に何%に設定するかは、測定者の判断に委ねられるために、主観的要素が入り込む余地があります。


7.注意点

イールドカーブによる米国の景気後退予測は、客観性が高く、現時点での、精度・信頼性も高いと言えます。

しかし、1966年に発生した逆イールドが予測を外したように、米国の財政政策の影響を大きく受けます。

また、1940年代や1950年代のように、金融・財政政策等の影響により、景気後退予測のツールとして全く、利用できない可能性もあります。

次回以降に、これらの影響などについて、述べて行きたいと思います。

2016年7月3日日曜日

投資観 第34回 1965年~1968年の米国の財政支出の推移

前回は、1965年~1968年の米国の住宅指標と製造業の指標を調べた結果、イールドカーブと同様に、これら全ての指標が1966年から1967年に景気後退を予測したにも関わらず、米国は、景気後退に陥りませんでした。

今回は、その理由を探るために、同時期の米国の財政支出の推移を調べてみます。

以下のグラフは、米国の1962年~1971年の財政総支出の推移です。


1966年から1968年にかけて、財政支出が拡大しています。

以下のグラフは、同じ期間の国防費の推移をプロットしたものです。



やはり、1966年から1968年にかけて、国防費支出が拡大しています。

以下のグラフは、1963年~1971年の財政総支出と国防費の前年比の推移です。


ピークの1967年には、財政支出の前年比は、約17%増、国防費の前年比は、23%増となっています。

実際に、米国は、1965年の北爆開始以降、ベトナム戦争の泥沼に入り、そのピークが1967年でした。

以上のことから、イールドカーブや住宅指標が予測した1967年の景気後退入りは、米国が国防費を中心に大幅な財政支出の拡大を行ったために、回避されてしまったと考えられます。

即ち、イールドカーブの景気後退入りの予測は、政府の軍事費の拡大などによって、外れる可能性があることを認識しておく必要があります。

2016年6月26日日曜日

投資観 第33回 1965年~1968年の米国の住宅指標の推移

前回は、1965年~1968年の米国債イールドカーブを調べ、1966年後半に逆イールドが出現し、景気後退入りを示唆していたにも関わらず、その後、米国が景気後退に陥らなかったことを発見しました。

今回は、同時期の米国の住宅指標と製造業の指標を調べて、イールドカーブと同様に、これらの指標が景気後退を予測していたかどうかを調べてみます。

まず、以下のグラフは、前回に作成した、1965年~1968年の3ヶ月既発債ベースの米国債イールドカーブです。
新発債にベースを合わせるために、0.15%下方に調整してあります。



1966年10月に逆イールドが発生していますが、その後の、景気後退は発生していません。

次に、米国の主な住宅指標である、住宅着工戸数の推移を調べます。
以下は、1965年~1968年の米国の住宅着工戸数の推移です。
トレンドを分かり易くするために、12ヶ月移動平均をプロットしています。



1966年半ばから1967年前半にかけて、住宅着工戸数が急落していることから、住宅指標もイールドカーブと同様に、米国の景気後退入りを示唆していたことが分かります。

さらに、米国の製造業の主要な指標である、ISM製造業業況指数についても、調べてみます。
以下のグラフは、1965年~1968年のISM製造業業況指数の推移です。


ISM製造業業況指数は、1966年半ばから、右肩下がりになり、1967年1月に、好不況の分かれ目である50を下回りました。イールドカーブや住宅指標と同様に、ISM製造業業況指数も、米国の景気後退入りを示唆していました。

このように、米国の主要な景気後退の先行指標が、いずれもほぼ同じタイミングで景気後退入りを示唆していたにも関わらず、実際には、米国が景気後退に陥らなかった理由は何故なのでしょうか。

次回は、1960年代後半の米国の財政支出の推移を調べて、この理由を探ってみることにします。

2016年6月19日日曜日

投資観 第32回 1965年~1968年の米国債イールドカーブ(既発債ベース)

前回は、1968年~1971年の米国債イールドカーブと日本株の関係を調べました。

今回は、さらに、時代を遡って、1965年~1968年の3ヶ月既発債ベースの米国債イールドカーブを調べてみます。

以下のグラフは、1965年~1968年の3ヶ月既発債ベースの調整前イールドカーブです。
注)このグラフでは、3ヶ月既発債の利回りをそのまま適用しており、新発債利回りにベースを合わせるための調整を行っていません。





上のように、1966年11月に、逆イールドが発生し、米国の景気後退入りを示唆していますが、その後、米国は、景気後退に陥りませんでした。
すなわち、調整前のイールドカーブは、景気後退入りの予測を外しています。

さらに、新発債にベースを合わせるために、この時期の3ヶ月既発債の利回りの推移を見てみることにします。
以下のグラフは、1965年1月4日から1968年12月31日までの3ヶ月既発債の利回りの推移です。点線は、この期間での利回りの平均値です。




この期間での3ヶ月既発債の利回りの平均値は、4.61%でした。

下のグラフは、1982年1月4日から2015年11月19日までの、3ヶ月物の新発債と既発債の利回り差の分布です。横軸が3ヶ月既発債の利回りで、縦軸が、新発債との利回り差です。



1965年1月4日~1968年12月31日の既発債の利回りの平均値である4.6%に対する利回り差をこのグラフから読み取ると、約0.15%であることが分かります。
即ち、この期間では、3ヶ月既発債の利回りよりも、3ヶ月新発債の利回りの方が、平均して、約0.15%高かったと言えます。

下のグラフは、上の結果を踏まえて、最初の1965年~1968年の3ヶ月既発債ベースの米国債イールドカーブベースを、0.15%下方に調整した後のイールドカーブです。





上のように、調整後のイールドカーブでも、1966年10月に、逆イールドが発生しましたが、米国の景気後退入りは起こりませんでした。
すなわち、調整後のイールドカーブでも、景気後退入りの予測は、外していました。

次回は、この期間における、住宅指標などを調べて、イールドカーブのみが景気後退の予測を外していたのかどうかを検証してみます。

2016年6月12日日曜日

投資観 第31回 1968年~1971年の米国債イールドカーブと日本株の関係

前回は、1968年~1971年の米国の景気後退における、住宅指標などの推移を調べました。

今回は、同時期の米国債イールドカーブと日本株の関係を調べます。

以下のグラフは、1968年~1971年の3ヶ月既発債ベースの米国債イールドカーブです。
新発債にベースを合わせるために、0.20%下方に調整してあります。




1969年8月の逆イールドの発生が、その後の米国の景気後退の先行指標となっています。

以下のグラフは、1968年~1971年の日経平均株価の推移です。
米国債で逆イールドが発生したタイミングを矢印で示しています。




1968年8月の逆イールドの発生が、米国と同様に、その後の日本の景気後退の先行指標にもなっていました。

しかし、この期間中は、景気後退期においても、株価の大幅な下落が発生しなかったため、逆イールドは、日本株を売却する指標としては、有効ではありませんでした。

日本の株価が下落しなかったのは、この時期に、インフレ率が高止まりしていたことが原因と考えられます。

以下のグラフは、1968年~1971年の日本のCPIの前年同月比の推移です。
CPIの前年同月比は、概ね、5%~9%で推移していました。


このように、高インフレの時代には、逆イールドが発生しても、株式の売却は行わず、買い持ちを続ける方が、良い結果につながると考えられます。

次回は、さらに、時代を遡って、1965年~1968年の米国債イールドカーブの推移を調べることにします。






2016年6月5日日曜日

投資観 第30回 1968年~1971年の米国の景気後退と住宅指標の関係

前回は、1968年~1971年の米国債イールドカーブと米国株の関係について、調べました。

今回は、同時期の米国の景気後退における、住宅指標などの推移を調べてみます。

まず、以下のグラフは、1968年~1971年の3ヶ月既発債ベースの米国債イールドカーブです。
新発債にベースを合わせるために、0.20%下方に調整してあります。




1969年8月の逆イールドの発生が、その後の、景気後退の先行指標となっています。

次に、米国の主な住宅指標である、住宅着工戸数の推移を調べます。
以下は、1968年~1971年の米国の住宅着工戸数の推移です。
トレンドを分かり易くするために、12ヶ月移動平均をプロットしています。




景気後退に約8ヶ月先行して、住宅着工戸数がピークアウトしていることから、この時期には、住宅指標が景気後退の先行指標として機能していたことが分かります。

さらに、米国の製造業の主要な指標である、ISM製造業業況指数についても、調べてみます。
以下のグラフは、1968年~1971年のISM製造業業況指数の推移です。




ISM製造業業況指数が好不況の分かれ目である50を下回ったのは、景気後退に入ってからであることから、この時期には、製造業の指標は、景気後退の先行指標として機能していなかったことが分かります。

以上のように、1968年~1971年の景気後退においては、米国債イールドカーブと住宅指標が、先行指標として有効に機能していたと言えます。

次回は、1968年~1971年の米国債イールドカーブと日本株の関係について調べてみることにします。

2016年5月29日日曜日

投資観 第29回 1968年~1971年の米国債イールドカーブと米国株の関係

前回は、1968年~1971年の3ヶ月既発債ベースの米国債イールドカーブを調べました。

今回は、同時期の米国債イールドカーブと米国株の関係について、調べてみます。

以下のグラフは、前回に作成した1968年~1971年の3ヶ月既発債ベースの米国債イールドカーブです。
新発債にベースを合わせるために、0.20%下方に調整してあります。




1969年8月の逆イールドの発生が、その後の、景気後退の先行指標となっています。
従って、逆イールドの発生した時点で、株式を売却すれば、その後の景気後退による株価下落を避けることが期待できます。

さらに、景気後退が終了した時点で、株式を買い戻せば、その後の景気回復による株価上昇を享受することが期待されます。

米国の景気後退の終了の先行指標として、最も有効な指標は、化学活動バロメータ(CAB)です。
以下のグラフは、1968年~1971年の化学活動バロメータ(CAB)の三ヶ月移動平均の推移です。




化学活動バロメータ(CAB)の三ヶ月移動平均は、景気後退の終了から4ヶ月先行して、1970年8月に底入れしています。

統計発表のタイムラグを考慮すると、1970年10月に底入れの確認が可能であり、そのタイミングで株式を買い戻すことが出来ます。

以下のグラフは、1968年~1971年の米国株のS&P500指数の推移です。
逆イールドの発生とCABの底入れ確認のタイミングを矢印で記入しました。




逆イールドの発生時点で株式を売却して、CABの底入れを確認した時点で、株式を買い戻した場合、この時期には、1割強の株価下落を避けることが出来たと考えられます。

従って、この時期において、米国債イールドカーブは、株式売買の指標としても、比較的に良く機能していたと言えます。

次回は、この時期(1968年~1971年)における住宅統計など、他の経済指標に推移について振り返ってみたいと思います。

2016年5月15日日曜日

投資観 第28回 1968年~1971年の米国債イールドカーブ(既発債ベース)

前回は、1971年~1975年の米国債イールドカーブと日本株の関係を調べました。

今回は、さらに、時代を遡って、1968年~1971年の3ヶ月既発債ベースの米国債イールドカーブを調べてみます。

以下のグラフは、1968年~1971年の3ヶ月既発債ベースの調整前イールドカーブです。
注)このグラフでは、3ヶ月既発債の利回りをそのまま適用しており、新発債利回りにベースを合わせるための調整を行っていません。


上のように、1969年8月に、逆イールドが発生し、約4ヶ月後に、景気後退に入っています。
すなわち、調整前のイールドカーブは、景気後退入りを、4ヶ月前に予測しています。

さらに、新発債にベースを合わせるために、この時期の3ヶ月既発債の利回りの推移を見てみることにします。
以下のグラフは、1968年1月2日を起点として、その後の景気後退入りの直前の1969年11月28日までの3ヶ月既発債の利回りの推移です。点線は、この期間での利回りの平均値です。


上のように、この期間での3ヶ月既発債の利回りの平均値は、約6%であったことが分かります。

下のグラフは、1982年1月4日から2015年11月19日までの、3ヶ月物の新発債と既発債の利回り差の分布です。横軸が3ヶ月既発債の利回りで、縦軸が、新発債との利回り差です。

1968年1月2日~1969年11月28日の既発債の利回りの平均値である6%に対する利回り差をこのグラフから読み取ると、約0.2%であることが分かります。
即ち、この期間では、3ヶ月既発債の利回りよりも、3ヶ月新発債の利回りの方が、平均して、約0.2%高かったと言えます。

下のグラフは、上の結果を踏まえて、最初の1968年~1971年の3ヶ月既発債ベースの米国債イールドカーブベースを、0.2%下方に調整した後のイールドカーブです。

上のように、調整後のイールドカーブでは、1969年1月に、逆イールドが発生し、その23ヶ月後に、米国が景気後退に入りました。
すなわち、調整後のイールドカーブは、景気後退入りを、23ヶ月前に予測しています。

次回は、この期間における、米国株とイールドカーブの関係について、調べてみることにします。

2016年5月8日日曜日

投資観 第27回 1971年~1975年の米国債イールドカーブと日本株の関係

前回は、1971年~1975年の米国の景気後退における、住宅指標などの推移を調べました。

今回は、同時期の米国債イールドカーブと日本株の関係を調べます。

以下のグラフは、1971年~1975年の3ヶ月既発債ベースの米国債イールドカーブです。
新発債にベースを合わせるために、0.15%下方に調整してあります。



1973年7月の逆イールドの発生が、その後の米国の景気後退の先行指標となっています。

以下のグラフは、1971年~1975年の日経平均株価の推移です。
米国債で逆イールドが発生したタイミングを矢印で示しています。




1973年7月の逆イールドの発生が、米国と同様に、その後の日本の景気後退の先行指標にもなっていました。

また、逆イールドが発生した時点は、この期間中の日本株のピークに近いことから、日本株を売却する指標としても、有効であったことが分かります。

次回は、さらに、時代を遡って、1968年~1971年の米国の景気後退と米国債イールドカーブの関係を調べることにします。





2016年5月1日日曜日

投資観 第26回 1971年~1975年の米国の景気後退と住宅指標の関係

前回は、1971年~1975年の米国債イールドカーブと米国株の関係について、調べました。

今回は、同時期の米国の景気後退における、住宅指標などの推移を調べてみます。

まず、以下のグラフは、1971年~1975年の3ヶ月既発債ベースの米国債イールドカーブです。
新発債にベースを合わせるために、0.15%下方に調整してあります。



1973年7月の逆イールドの発生が、その後の、景気後退の先行指標となっています。

次に、米国の主な住宅指標である、住宅着工戸数の推移を調べます。
以下は、1971年~1975年の米国の住宅着工戸数の推移です。
トレンドを分かり易くするために、12ヶ月移動平均をプロットしています。



景気後退に先行して、住宅着工戸数がピークアウトしていることから、この時期には、住宅指標が景気後退の先行指標として機能していたことが分かります。

さらに、米国の製造業の主要な指標である、ISM製造業業況指数についても、調べてみます。
以下のグラフは、1971年~1975年のISM製造業業況指数の推移です。



ISM製造業業況指数が好不況の分かれ目である50を下回ったのは、景気後退に入ってからであることから、この時期には、製造業の指標は、景気後退の先行指標として機能していなかったことが分かります。

このように、製造業の指標だけを見ていると、景気後退を予測できない場合があることに、留意する必要があります。

また、1971年~1975年の景気後退においても、米国債イールドカーブは、先行指標として有効に機能していたと言えます。

次回は、1971年~1975年の米国債イールドカーブと日本株の関係について調べてみることにします。