前回は、米国債イールドカーブが、米国の景気後退の先行指標としての特徴を持つことを説明しました。
今回は、米国の株価が、景気後退の先行指標として機能しているかどうかを、イールドカーブと比較しながら、2008年のリーマンショック時の景気後退を例に説明します。
以下のグラフは、前回に掲示した、1982年5月12日からの米国債イールドカーブの推移です。
また、以下のグラフは、米国の代表的な株価指数であるS&P500指数の、2002年1月から2010年12月までの月次終値の推移です。
グラフ上の、Xの文字の位置(2006年3月29日)が、この期間中で初めて、米国債イールドカーブの逆イールドが出現した時点です。
その後、株価指数は、さらに、上昇して、景気後退入りの3ヶ月前の2007年10月に、ピークアウトしています。
一見、グラフからは、株価指数が景気後退の先行指標として機能しているように見えますが、実際に、株価指数のピークアウトを確認するためには、株価が十分に下がっていることを見届ける必要があります。
例えば、グラフ上の、Yの文字の位置(2008年3月)には、株価指数のピークから約17%の下落となり十分に下落していますが、この時点では、既に米国は景気後退入りしていました。
また、グラフ上のAやBの時点のように、株価が大きく下落していても、景気後退とは無関係な場合もあります。
このように、株価を景気後退の先行指標として利用すると、確認するタイミングが遅れたり、誤って景気後退を予測してしまうリスクが高くなるため、実務上、難しいと言えます。
それに対して、逆イールドの検出は、判断基準の曖昧さがなく、景気後退の1から数四半期前、即ち、株価がピークアウトする前に、確認出来るため、投資実務上も優れた先行指標と言えます。
ここで、2006年3月における、逆イールドを使った株式投資のパフォーマンスを機会損失と損失回避の差として、算出すると以下のようになります。
機会損失・・・景気後退入り前の最高値である2007年10月の1549.4ポイントまで、保有しなかったことによる利益機会の損失。
(1549.4 - 1294.9) ÷ 1294.9 × 100% = 19.6
損失回避・・・景気後退入り後の最低値である2009年3月の797.9ポイントまで保有しなかったことによる損失の回避。
(797.9 - 1294.9) ÷ 1294.9 × 100% × (-1) = 38.3
投資パフォーマンス = 損失回避 - 機会損失 = 18.7
次回は、米国の景気後退の先行指標として、イールドカーブとともに、重要な住宅関連指標について、述べることにします。
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