1.前回までのまとめ
前回までに、2000年前後と2006年前後の二度の景気回復では、長期金利と住宅資金貸付額が、小さな循環を作りながら、ほぼ、同期的に上下して、長期金利による住宅投資の自律的な制御が効いていたことを確認しました。
今回は、1995年前後の金融危機・アジア危機前の景気回復期における、日本の長期金利と住宅資金貸付額との関係を調べてみます。
2.長期金利
以下のグラフは、1994年1月から1998年12月の日本の長期金利の推移です。
各月の月末の利回りをプロットしたものです。
データ源泉:HSCI
3.新規住宅資金貸付額
以下のグラフは、長期金利と同じ期間(1994年1Qから1998年4Q)の新規住宅資金貸付額の4四半期移動平均の推移です。
長期金利とは異なり、新規住宅資金貸付額は、1996年2Qに4兆5千億円で、大きなピークを付けた後、景気後退に向かうにつれて、3兆円強まで下落し、その後、安定した水準で推移していました。
1995年から1996年にかけて、新規住宅資金貸付額が大きく上昇に転じている理由は、1997年4月からの消費税の3%から5%への増税が決定したことにより、住宅の駆け込み需要が高まったためです。
このように、金融危機・アジア危機前の景気回復局面では、長期金利と新規住宅資金貸付額が、異なった形で推移していました。
4.データポイント
次に、データの値で上の期間中の長期金利と新規住宅資金貸付額を比較してみます。
【長期金利】
1993年12月・・・3.933% 左側のボトム
1994年8月・・・4.823% ピーク
1997年3月・・・2.474% 右側のボトム
【新規住宅資金貸付額】
1993年3Q・・・17124.25 左側のボトム
1996年2Q・・・45507 ピーク
1997年1Q・・・32884 右側のボトム
上のように、両者の左右のボトムの位置は、ほぼ、同じですが、新規住宅資金貸付額のピークが約2年近く、後方にずれています。
この期間は、長期金利の上昇による住宅投資の自律的な抑制が効かず、消費税増税前の駆け込み需要が、金利コストを無視した形で、非常に強かったと言えます。
5.分析
1990年代半ばから後半にかけては、まだ、バブル崩壊の負の影響が残る中で、1994年に消費税の増税が決まりました。その結果、長期金利が1994年8月にピークアウトした後も、金利コストを無視した住宅投資の高まりによって、景気がかろうじて支えられていたと考えられます。
このように、長期金利と住宅投資(住宅資金貸付額)が、同期しない景気回復パターンの場合(主に、消費税の増税時)は、住宅資金貸付額がピークアウトすると、その後、比較的に深刻な景気後退に陥ると考えられます。
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