2013年7月21日日曜日

日米の景気循環の比較 第22回 住宅ローン資金需要判断D.I.

1.前回までのまとめ
 
前回までに、日本の景気後退は、以下の3つの事象のいずれかを契機に、引き起こされることが分かりました。

(1)米国の景気後退
(2)日本単独での円高進行
(3)消費税増税時の住宅投資のピークアウト

それぞれの事象の予測可能性とその方法・対処については、以下のようにまとめられます。

(1)米国の景気後退

  予測可能。米国の住宅指標やイールドカーブを使う手法が有効。

(2)日本単独での円高進行

  予測不可能。ただし、日本国内で株価の大幅な下落や深刻な景気悪化につながらないため、株式投資の観点からは、予測する必要性は少ない。

(3)消費税増税時の住宅投資のピークアウト

  予測可能。増税時期、もしくは、データからは、日本の新規住宅資金貸付額のピークアウトを、長期金利と比較分析することによる。(長期金利がピークアウトしない中で、新規住宅資金貸付額のピークアウトを観測した場合)

今回からは、(3)の消費税増税時の住宅投資のピークアウトを判定するための、主要な指標である新規住宅資金貸付額を、補完する各種の住宅関連指標を、分析していきたいと思います。


2.新規住宅資金貸付額の問題点

  日本の住宅投資のピークアウトを判定するために、新規住宅資金貸付額を指標として使う場合、確認時期が遅れるという問題点があります。

  例えば、ある年の1Qに新規住宅資金貸付額がピークアウトしていた場合、それを確認出来るのは、日本銀行から2Qの預金・貸出統計が発表される、その年の8月半ばとなり、約5ヶ月~7ヶ月の遅れとなります。

 
  従って、新規住宅資金貸付額をより早く把握できる補完的な他の統計データがあれば、実務上、有効であると言えます。


3.主要銀行貸出動向アンケート調査

  この主要銀行貸出動向アンケート調査は、日本銀行と取引のある国内銀行および信用金庫のうち貸出残高の大きい50 行を対象に、一年に4回(1月、4月、7月、10月)、貸出動向をアンケート形式で調査・発表しているもので、対象金融機関の貸出残高全体に占める貸出シェアは約75%に達しています。

  この調査の中に、住宅ローンの貸出動向の調査が含まれており、住宅ローン資金需要判断D.I.というポイント形式でまとめられています。

  この、住宅ローン資金需要判断D.I.が、翌月に発表される預金・貸出統計の中の新規住宅資金貸出額の動向を予測する上での重要な指標となります。


4.住宅ローン資金需要判断D.I.の推移

  以下のグラフは、2001年4Qから2013年2Qまでの住宅ローンの資金需要D.I.の推移です。
  季節要因などのノイズを減らすために、4四半期移動平均を計算して、プロットしています。


 
  比較のために、2001年4Qから2013年1Qまでの新規住宅資金貸出額(4四半期移動平均)をプロットしたグラフが以下になります。


 ボトムの位置がやや離れていますが、特に、ピーク付近で、両者の形状は、似たものとなっています。

5.データポイント

続いて、データの値で、住宅ローンの資金需要D.I.と新規住宅資金貸出額を比較してみます。

【資金需要D.I.】
2003年4Q・・・1回目のピーク
2004年4Q・・・1回目のボトム
2006年2Q・・・2回目のピーク
2009年4Q・・・2回目のボトム

【新規住宅資金貸出額】
2003年4Q・・・1回目のピーク
2004年4Q・・・1回目のボトム
2006年2Q・・・2回目のピーク
2011年3Q・・・2回目のボトム

【2回目のボトムの位置が異なっている理由】
資金需要D.I.がマイナスの範囲にある場合は、もし、改善方向に向かっている場合でも、実際の資金需要は、減少傾向を続けると推測されます。
上のグラフを比較しても、資金需要D.I.がプラスに転じた時点で、初めて、新規住宅資金貸出額が底を付けている点から、両者の動きが連動性を持つのは、資金需要D.I.がプラスの範囲にある場合に限られるのでないかと考えられます。

6.まとめ

主要銀行貸出動向アンケート調査の住宅ローン資金需要D.I.が、プラスの範囲内にあるときは、新規住宅資金貸出額との連動性が高い。
特に、新規住宅資金貸出額のピークアウトが近づいている状況では、その一ヶ月前に先行して住宅ローン資金需要D.I.がピークアウトする可能性が高く、住宅ローン資金需要D.I.は、新規住宅資金貸出額の先行指標としての利用価値が高い。

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