2013年8月11日日曜日

日米の景気循環の比較 第25回 景気ウォッチャー調査 住宅関連 現状判断DI

1.前回のまとめ
 
前回は、首都圏の中古マンションの価格動向を示している東証住宅価格指数について、景気循環との関係を調べました。

その結果、東証住宅価格指数は、新規住宅資金貸付額の補完指標としては、利用出来ないものの、ある程度、景気後退に先行して動いていることを確認しました。

今回は、先ず、前回の補足の分析として、東証住宅価格指数の前年比の推移について検討してから、その他の住宅関連指標として、内閣府が集計して公表している街角景気(景気ウォッチャー調査)のサブインデックスである住宅関連・現状判断DIについて、景気循環との関連について調べてみます。

2.東証住宅価格指数の前年同月比の推移(前回の補足分析)

 東証住宅価格指数のように、季節変動やノイズが少なく、毎月の変動幅も小さい指標では、 前年同月比の推移を見ることによって、短期的な価格変動の発生状況を確認出来ます。

  以下のグラフは、1994年6月からの東証住宅価格指数の首都圏総合指数の前年同月比の推移です。
  
  上のグラフを見て分かるように、1995年から1998年にかけて、東証住宅価格指数の前年同月比はマイナス圏内ながら急上昇を見せています。これは、長期的なデフレ環境の中で、消費税の増税による需要拡大によって、一時的にデフレが緩和したことを示しており、直後の景気後退の先行指標となっています。
 
  また、2007年と2010年の前年比のピークアウトも、その後の景気後退を示唆しています。
  このように、価格動向の指標である東証住宅価格指数は、前年同月比の推移を見ることによって、景気後退に関して、重要な情報を得ることが可能であると言えます。
 
3.街角景気(景気ウォッチャー調査)とは
 
 街角景気(景気ウォッチャー調査)とは、内閣府が月次で発表している景気に関する指標のことで、北海道、東北、北関東、南関東、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州、沖縄の11地域を対象に、小売店やタクシー運転手など景気動向を敏感に反映する現象を観察できる業種の人の中から選定した2,050人にインタビューして、景況感を集計・分析した上、景気動向の指標としてまとめたものです。

  指標は、景気の現状に対する判断(現状判断DI)と景気の先行きに対する判断(先行き判断DI)に分かれ、各DIは、さらに、業種などに基づいて、家計動向関連(小売関連、飲食関連、サービス関連、住宅関連)、企業動向関連(製造業、非製造業)、雇用関連というサブインデックスに分類されています。

  住宅に関しては、現状判断DIのサブインデックスである住宅関連を参照することによって、設計事務所所長・職員、住宅販売会社経営者・従業員、その他住宅投資の動向を把握できる者の景況感を一ヶ月以内に把握できるため、タイムリーな指標として役立ちます。(景気ウォッチャー(調査客体)の地域別・分野別構成)

  さらに、指数と同時にインタビュー内容が判断理由集として公開されているため、こちらも、数字に表れない参考情報として有用なものとなっています。


4.景気ウォッチャー調査 住宅関連の現状判断DIの推移

以下のグラフは、2001年9月からの住宅関連の現状判断DIの推移です。
ノイズを減らすために、12ヶ月移動平均を取ってプロットしてあります。


ピークは明瞭には出ていませんが、リーマンショック時の景気後退の直前に、大幅な指標の落ち込みが見られます。
また、東日本大震災後の円高不況に関しては、このグラフに兆候は現れていません。

5.分析

  景気ウォッチャー調査では、全国の11地域でのインタビュー結果を平均して指数化しているために、全国的な景況感を早期に把握できる利点が有る一方で、地域別の経済規模が勘案されていないために、相対的に重要な首都圏や関西圏の変化が指数に現われ難いという欠点があります。

  グラフでピークが明瞭に出ないのも、主に首都圏に最初に現れる景気の変動が全国的に拡大するまでに時間を要するからではないかと考えられます。

  従って、住宅投資の変化から景気後退を予測するための指数として、この、景気ウォッチャー調査の住宅関連の現状判断DIを用いるのは、やや、難しいと考えています。

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